趣味日記Passage

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本の感想「クージョ」(モダンホラー)スティーヴン・キング著

今日は陣張りの日ですが、33-40鯖東西戦
52鯖防衛戦、夫は休みで自分で陣張り。
なのですごく楽です^^

 

 

普段本の感想は、ミニブログの方で書く事が
多いのですが、今回は長文になってしまった
のでこちらで。

 

恐らくご存じの方も多いと思われる、モダン
ホラー界の帝王、スティーヴン・キング著の
「クージョ」という作品の感想です。
(ネタバレ有り。ミニブログではネタバレ無し

が多いです。)

 

 

クージョとは犬の名前で、これは簡単に
言いますと「狂犬病にかかった犬が次々
人を襲う話」です。

 

こう書くとB級ホラーテイスト満載な話と思わ

れるかもしれませんが、デビュー後7作目にして、
ホラー作品がまだ一部の愛好家にしか売れ
なかった時代に5000万部も売り上げていた
という、油の乗り切った時期のキング作品だけに
一筋縄ではいかない話です。

 

先ず序盤では、この話の主だった登場人物の
人物像や家庭環境等が丁寧に描写されています。
なかなかクージョの出番が無く本筋に入りません。

 

ですが話と登場人物の基盤をしっかり構築し、
そのリアリティで読み手の共感をよび、飽きさせ
ません。

 

中盤になってようやく本筋の話が進み始めます。
しかし、ドキドキハラハラな展開になると、その度に
肩透かしを食わせるかの如く、別の人物の違う
トーンの話に切り替わります。緩急のリズム取りが
実に上手いです。

 

だけどただ読み手を焦らしている訳ではありません。

 

これらの断片的なエピソードが終盤、勢いよく集約
されていく様は見事です。
キングも筆が乗っていたようで一気に書いたらしく、
ぐいぐいと話に引き込まれます。夢中で読みました。

 

 

故障した車に息子と母親が閉じ込められ孤立し、
狂犬病にかかったクージョにしぶとく狙われ襲われ
何度も窮地脱出を試みるも叶わず、助けが来る

ことを願い徐々に夏の暑さ(車の中に長時間いると

猛烈に暑い)と脱水症状とで弱っていく息子を助け

ようとあがき結局は、微妙な関係になっていた夫が

ここぞという時に助けに現れるのかと思いきや、

母親が自分で犬を撲殺して窮地脱出。

(近くに転がっていたバットで)

 

撲殺のくだりは、本来笑う所ではないのですが
あまりに意外であっけない結末に、ふっと笑いが
こみあげてしまいました。母親に感情移入して
読んでいたので「あぁ助かって良かった」という
安堵の気持ちもあったのかもしれません。

 

 

 

でも。

 

 

 

 

ここでなんとキングはこの母親の最愛の息子を
死なせてしまいます><オーマイガッ!

 

 

必死で息子を蘇生させようとしつつ、もう少し早く
犬をやっつけられていたら。。。!と後悔する母親。

 

しかも夫がようやく妻と息子の危機に気付いて

駆けつけてみれば、妻も傷だらけの変わり

果てた姿になっていて・・・。

 

 

悪役(クージョ・・・本来は忠実で良い性格だったのに
病でこういう役回りに)が退治されてハッピーエンド
とはいかない、なんともいえないやるせなさが残る
所がリアルでもあり、実にキングらしいシニカルさ
だと思います。(キングの毒舌は有名)

 

表紙がいまひとつキャッチーさに欠ける感じがして
日本ではあまり売れなかったらしいこの作品、
キングをご存じの方ならば、先ず読んで損はしない
作品かと。(ネタバレしてしまいましたが;)


とても面白かったです。

翻訳も読みやすく◎


最近短編を読む事が多いのですが、長編には
長い話なりの良さがあるとつくづく思った作品
でした。

 

・・・という事で、今はアガサ・クリスティの「アクロイド
殺害事件(アクロイド殺し、というタイトルの翻訳も
有り)」という長編ミステリを読み始めています。


(クリスティは中学生の頃「そして誰もいなくなった
を皮切りに30冊位読みましたが、この作品は
未読だったのです。代表作の1つなのですが;)

 

クージョもこれも我が家の書庫にずっと前から
眠っていた本です。(夫が学生時代に買った

のだとか)


最近の文字の大きな本に慣れてしまうと

昔の本は文字が小さくて1Pに文がぎっしり
詰まっているものが多いので、読むのに気合が
いりそうと敬遠していたのですが、読んで面白
ければ意外と気にならないものだと思いました。