本の感想「夢幻花」東野圭吾(ネタバレ無し)
前回の記事でも少し感想書きましたが昨夜
読み終えたので改めて。
なるべくネタバレないように書いていくつもり
ですが興ざめな点がありましたらすみません;
なんというか・・・いろいろ言いたい事がある
作品なのですよね。
私は基本的に、読んでつまらなかった作品は
読まなかった事にする方なので、言いたい事
があるというのはつまらなくはなかった、という
事なのですけど。
では面白かったのかというと・・・
全体の4/5位までは東野圭吾作品にしては
平凡な、面白みにかけるが読みやすい
だけの作品と感じました。
ところが。
終盤それまで淡々としていた話に急に
加速がかかり、ともすれば読み落としそう
だった沢山の伏線が集約されていく様と
(強引な感じもしましたが)タイトルに
秘められた「謎」をめぐる話には驚かされ
ました。
謎が解き明かされ、新たに生まれた謎にも
答えが用意されていて、突如として目の前が
開けていくような、読んでいて一種のカタル
シスを覚えるほどの快感がありました。
ここで「この本面白い!」と感じた人もいる
でしょうね。
その位インパクトのあるネタでした。
恐らく作者はこのネタを発見した時「やった!」
と手ごたえを感じた事でしょう。
ミステリの醍醐味、謎が解き明かされていく
部分については結構楽しく夢中で読みました。
伏線張ってあったとはいえラストの方の作者の
メッセージ(を登場人物が代弁)は唐突な感じ
もしましたが、言葉に力があり、この作品を
通じてこれを伝えたかったのか、と。
ただ、登場人物の言動からもっとメッセージに
繋がるものを感じさせて欲しかったです。
後・・・前回の記事で書いた
◎個性も魅力も無い登場人物
◎偶然の繋がり多すぎ
◎人物の行動の動機に説得力が無い
このうち最初の2つは読み終わっても印象
変わらず。美形キャラが何人か出て来ますが
それは「人物の魅力」ではないですし。
3つ目はラストの方の「説明」で一応動機は
「わかった」のですが、そんなに一生を
かけての使命感に燃える人ばかりって
どうなの?
皆同じ事考えて同じように行動するって
何か薄気味悪いよ、不自然だよ?
と思い、共感はし辛かったです。
登場人物が自分の意志で動いている
ようでいて、実はストーリーを進める上での
「駒」になってしまっている点もマイナス。
ただ、このネタを面白いと感じ、皆が同じ
行動をする不自然さに違和感を感じない
タイプの人なら「夢幻花」を高く評価する
かもしれないですね。
個人的なお薦め度は◎←〇←△←×で言うと
〇に近い△かなぁ・・・。
彼の小説としての出来の良い作品を読みたい
と思われるのでしたら「秘密」(これがベストかと)
「容疑者Xの献身」(動機については無償の愛
ではなく、自己犠牲に陶酔する男の話と思えた。
でも話は面白かった)「白夜行」(好みではない
けれど、構成がしっかりしていて独特の手法。
長い話だが隙が無く、読みごたえがある)
あたりをお薦めします。