本の感想【食べる私】平松洋子著
これは「食べる事」に対する著名人各々の拘りを
語った個性豊かな人々の話です。文藝春秋刊。
私は「食」とか「料理」に関する話が好きで、本屋で
この本を手にした時何かひらめきのようなものが
あり、ハズレはなさそうだと感じたので購入。
インタビューがメインなので、軽めの読み心地を
予想していたら、読みやすくひとりあたりのページ
数も少なめなのに、どっしりとした読み応えに
びっくり。
登場するのはTVタレント、漫画家、料理研究家、
俳優、詩人、作家、宇宙飛行士、登山家、
アスリート、美術家等。
インタビューアーであり作者でもある平松洋子の
話の引き出し方が、とても上手いです。
食べる事は人間の体だけでなく、心も作る。
偏食だったり、変食だったり、やたらと豪華だったり
粗食だったり、健康にいいものを突き詰めていたり、
サバイバル系だったり、宇宙食だったり。
「ごちそうはいらない、早く空腹が満たされればいい」
と言う人も。
「食」を語りながら「自分」を語る。
短くて、濃密で、強烈で、深い話。
「食べる話」でなく「食べる私」という本のタイトルに
納得。
所謂どこそこの店の何が旨いとかのグルメトーク
では無いのですね。(グルメトーク、好きですけど)
皆饒舌で、立て板に水のキレの良い話っぷりですが、
作者の聞き上手、人選の良さもさる事ながら、
編集+構成も良いのだろうと思います。
話の切り上げ方が上手くスッキリ。
後味良い読後感も美味しいものを堪能したような
満足感があり魅力です。
以下、作者のあとがきから一部引用↓
「食べものについて語れば、人間の核心が見えてくる。
その理由はとても簡単だ。食べることは、生きること。
(中略)食について思考をめぐらせる言葉はみずからの
生の証しである。そして紡ぎだされるのは、血湧き肉
躍る自由と放浪の物語だ。」
ちょっとお値段高めなのと、個性の強い人が多い
点、好き嫌いもありましょうが、分厚く読み応えが
ある本です。
個人的なお薦め度は◎←○←△←×で、◎。
久々の大当たり。
文藝春秋&作者の企画らしい発想と切り口が、
独特でなんだか嬉しい一冊。お薦めです(*^_^*)