趣味日記Passage

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雑話:アイスクリームのおじさん

こんにちは。

今回の雑話は、私が
小学生の頃の話です。



子供の頃、毎年夏休みになると神奈川県から両親の実家

(京都と名古屋)に行くのが私の子供の頃の家の恒例行事でした。

新幹線に乗って行く道中も旅行気分で楽しいものでしたが、母方の

実家というのがちょっと特殊で・・・名古屋の方なのですが



母方の祖父は、私が生まれるずっと前に亡くなり、祖母は母や父が

勤めていた会社(社内結婚でした)の寮母を長く住み込みでやっていて 

その寮は5階建てのマンションみたいな外観で、独身の男性社員だけが

住むことが出来ました。



祖母(当時60歳位)にとっては私が初孫だったので、

随分可愛がってもらいました。

痩せていて口元きりりとしてて厳格な人でしたが

笑うと愛嬌のある優しい感じになって・・・祖母の笑顔が好きでした。


でも住んでいる環境が違う老人と子供の会話って、共通項が少ない。。。

私には歳の近い弟が2人いて、3人で連れ立って広い寮の中を探検し

時々出会う人に話しかけては遊んでもらう事が結構ありました。



お盆の頃に行く事が多かったので、寮内はガランとしていましたが

若い男性が何人か残っていて(私は当時10歳位)子供達が寮内

うろうろしてるので最初は驚かれましたが、寮母の孫だというと

相手になってくれて。



独身男性の部屋ですからアイドルとか色っぽい女優さんだかの水着の

ポスターとか貼ってあるわけですよ。個室だった部屋の中は生活感

ありありで、
イケメンな人もいて子供心にドキドキしたのを覚えていますw



そういう探検遊びも楽しかったですが 、寮の食堂で働いているおじさん

(40歳台に見えた) が子供好きな人で、よく、規模の大きな動物園や

植物園や遊園地に連れて行ってくれました。



うちの親もよく遊びに連れ出してくれる人でしたが、その間両親は

両親で、祖母と話したり観光に行ったりしていたようです。

子供が小さいと、夫婦ふたりきりで出かけるのは難しいですからね。




で。


件のおじさんは、それはもうサービス満点で、一緒にいて楽しかった

のですが、忘れられないエピソードがありまして。




 ある日、誘われておじさんの家に遊びに行くと、にこにこしながら

「アイス食べるか?」と聞かれて、もちろん食べるー!

答えた訳ですが、台所に立って、おいで、と手招きするんですよ。

いつも持ってきて くれるのに変だなぁと思いつつ3人で傍によると




「ほらっ」





勢いよくやや大きめの冷凍庫のドアを開けると中には・・・








カラフルで、いろいろな形と味のアイスがぎっしりつまっていました。







「うわー、うわー、すごーい!!!」





お愛想でなく本当に感激して小躍りしながらきゃあきゃあ騒ぐ私たち。





どや顔で満面の笑みの、おじさんの、人の良さそうな顔。






きっと私たちを喜ばせようと、いろいろなお店でアイスを買い集めて

反応を想像しながら冷凍庫に詰め詰めしていたおじさんも楽しかった

に違いない



その時は、驚きと、嬉しさと、おじさんのサプライズに対する感謝の

気持ちでいっぱいで、考える余地がなかったのですが









おとなになってその思い出を振り返ると





「奥さんの影が、全く無かった」





事に思い当たり







独身だったのか(寮の従業員は独身である必要はありません)



死別したのか



何かの事情があって別れたのか





そういえば


おじさんとは、たくさん話をしたけれど

奥さんや彼女の話は聞いたことがなかったような気がする・・・





多分おじさんに子供がいたら当時の私たち位の年頃なのだろう







冷凍庫にいっぱいアイスを詰め込んで、自分の子ではない

子供たちの喜ぶ姿を見たがった、あのおじさんの心の中は

楽しさだけでは無かっただろうと思うと少し







・・・切ない









懐かしく、思い出すと心温まる、







けれど少し、悲しい話。