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本の感想「天と地と」海音寺潮五郎著

天と地と海音寺潮五郎

516ten


最近、新装版↑が出たようですが、

私は古い方の「日本歴史文学館シリーズ」の一冊として読みました。


かなり前にNHK大河ドラマにもなったそうで、ご存知の方も
少なくないと思われる作品、上杉謙信長尾景虎)の半生を描いた
歴史小説です。

あらすじ(AMAZON紹介文より引用) 

戦乱の続く越後の国。守護代長尾為景を父とする虎千代は、幼くして母を失し、
父に故なくして疎んじられた挙句、養子に出されるも、忠臣金津新兵衛や百姓出の
娘松江らに守られて武将の子として成長していく。天文五年(1536)に元服
喜平二景虎と名乗った。後の上杉謙信である。

越中との戦いで討死した為景に代わり守護代となった長兄・晴景だが、凡庸な
器量のためか、国内に争乱が続く。宇佐美定行の許で武将としての修業を続ける
景虎は、幾多の合戦で勝利し武名を挙げ、次第に兄弟の仲は悪化する。兄との
戦いに勝利した景虎は、天文十八年(1549)弱冠二十歳で長尾家当主となり、
越後統一を実現する。

領土拡張に積極的な武田晴信と北信・川中島で闘った景虎は初めて敗れた。
雪辱に燃える景虎の許へ房州の里見氏から北条氏康の横暴の訴えが届く。
小田原城を包囲した景虎関東管領に就任し、上杉の家督も譲られ上杉政虎
名を改めた。そして永禄四年(1561)に、上杉・武田両軍は雌雄を決すべく川中島
一大血戦を企てることに。





結論から言いますと、ラストはあっけなかったですが(もう少し余韻が
欲しかった・・・)面白かったです。



以前も少し書きましたけれど、
作為を強く感じる作風なので、好みが分かれるかもしれません。



景虎の人物像は

武田信玄(晴信)に言わせると

「いさぎよいが少々子供じみた正義漢」

北条氏康に言わせると

景虎という男は潔癖で、正義好みで、みずからの武勇に絶対の
自信を持ち、烈火のような戦いぶりをする男だ。欠点はあまりに
名誉欲が強いのと気短なことだ」


2人共作者目線なので正しくそういう人物として描かれています。
ただ・・・


景虎の幼い頃、歳のわりには小柄で・・・小柄でという描写が何度となく
繰り返されたところを見ると、成人しても当時の男性としては小柄で
あった事が、直接
的には書かれていなくとも景虎の人格形成に及ぼした
影響は
大きいのではと思います。


女性を頑なに遠ざけていた所とか。

名誉欲が強かった事とか。


そのコンプレックスゆえではなかったかと。







「女嫌いで神仏の信仰厚い人」



というのが、読む前の私の謙信イメージで・・・この本では葛藤しながらも
宇佐美定行の娘乃美ただひとりに想いを寄せていたという風に描かれて
います。


景虎と乃美のエピソード好きでした。
子供の頃、乃美に惹かれるものを感じつつ、ふたりの関係が姉と弟の
ようであった事にむかつく景虎w
成人して、自身の葛藤に悩まされつつ「何故おまえは嫁に行かぬのだ」と、
涙ながらに
乃美を責めるシーンが切なくてよかった。。。



色好みが普通であった戦国武将の中で、生涯不犯というのは
信仰厚かったせいもあるとはいえ、やはり異色。



信仰云々は苦手分野なのでどうかなと思っていましたが、
割合抵抗なく読めました。景虎に邪心があまりなかったせいかな。。。



潔癖なのは好ましくもあり、信玄が言うように子供じみていると感じる
部分もあり。


自分自身含めて綺麗なもの(心)だけ見ていたかった人物なのかな・・・と
思いました。(乃美と夫婦になっていて、彼女の嫌な面を見つけてしまったら
耐えられていたのかな、とも。)


武田信玄を「狸」と呼び、彼のよくやる空き巣狙いや調略を卑怯と言い、
正々堂々
戦う事を好むという。


その一方で、合戦では知略を巡らす事を厭わず、むしろゲームのように
楽しんでいたような。


巻末の作者の対談にもありましたが、そういう矛盾をそのまま両立
させていた、戦国時代には稀有な武将であったと。。。






合戦での彼の熱さはなかなかそそられるものがありますね^^
まさに烈火のごとく。


川中島の戦いは、信玄と景虎の戦い方の対比が面白かったです。

囮戦法はちょっとわかり易すぎ、かな。

決着のつけ方が景虎らしいといえば言えるのですが



(えぇっ、これで終わり?(゚д゚))




的な、あっけなさもありました・・・;





謙信といえば「車懸り」という戦法が有名ですが、名前だけがひとり歩き
していて、実際の所はよくわかっていないのだそうですね、少なくとも
作者が調べた限りでは。

所々に織り込まれる薀蓄は、綿密な取材を物語るもので、物語の山場で
行われた戦法ゆえ、詳細がわからないというのは作者には歯がゆかった
と思います。知りたかったな、
「車懸り」。作者なりの解釈で書かれては
いましたが、やはりしっくりこない感じ。




後は・・・


時に主役(景虎)を食ってしまうほど、魅力的だった脇役達

◎軍神景虎育ての親、とも言える軍師、宇佐美定行
「悪さ」が目に見えるほどわかりやすい(IXAでは天にもなった)三好長慶
よりも
余程策士だと思ったのですがね・・・

世渡り上手でソツがなく、あたりが柔らかで微笑みながら意のままに人を操る・・・
周りからは「機略に優れて人物も良い」と評価される策士。したたかですね。

最後の方では普通の娘(乃美)想いのお爺さんになってしまいました; 
・・・キャラ違うでしょ、とツッコミ入れてもいいですか?w

◎美貌なのに怪力女武者、松江
最初の方、子供の頃の景虎が可愛げなくて感情移入し辛かった頃
恐らく読者が思い入れしやすく話に入り込みやすくなるよう作られた
架空の登場人物(らしいです)

景虎の父の妾となっても尼さんになっても女武者でも、田舎っぺ丸出しで
善良で、勇ましくて大らかで。子供時代の景虎の傅役を勤めていた事もあり、
彼の正義漢は、この頃培われたものだとするのが海音寺流。
松江の登場する場面はとても楽しく痛快で、面白かったです。

◎「邪悪」を絵に描いたような妖艶な悪女、藤紫
松江とはほぼ正反対で、胸が悪くなるほど嫌な女です。

でも、戦国時代に生まれて、時代の荒波に揉まれて運命に必死で
抗おうとしていた哀れな女、と思えないこともない。。。最後は景虎の手で
成敗される。これも架空の人物のようですが、話の流れ的にそうなるしか
なかった、のかな。


◎明朗快活、合戦では頼りになる男、鬼小島弥太郎
松江と夫婦が似合いな、スカッと爽やか男らしく時に愛嬌を見せる彼。
景虎の采配を、目をキラキラさせながら直立不動で待つ姿が微笑ましい^^

IXA初期に序の(鬼)小島弥太郎が人気だったのは、序なのに槍B
で低コストだから、だけではなかったんだなきっと、と思いました。

◎忍者らしい忍者、服部玄鬼
忍者好きなので・・・彼の忍者らしい素早い所作、影めいた活躍の描写が
読んでいて楽しかったです。

最後はあっけなかった・・・
この作者、終わり方があっけないパターンが多いなぁ。。。


◎能天気な上杉憲政
IXAの極の絵、そのまんまなイメージです。
頼りない、情けないけど、どこかお気楽能天気。
でも風雅の嗜みはピカイチ。そういう方面で景虎の師匠となる。
あの絵は実に、らしくていい。


コミカルな描写が上手い人ですね、作者は。
講談聞いているような感じで、つい声出して笑ってしまう
あぁ笑わされてるなぁと思いつつ^^;






・・・物足りない点ところどころありますが、全体としてみれば
実に面白い話でした(´∀`*)

文体は少々古めですが、読みやすかったです。



IXAやっていると面白さ倍増、な感じもします。(IXAカード絵思い
浮かべて楽しんだり)
未読の方は、ネタバレしてますが話の筋がわかっていても
楽しめると思いますので是非、ご一読を。



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