最近読んだ本の感想いろいろ
最近読んだ本の感想を4つ。
【ガソリン生活】伊坂幸太郎著
思考し、乗り物同士で会話をする(人間とは話せない)
車の視点で描かれる、ユーモアミステリー。
ミステリーとして、作品としての読み応えは正直
ちょっと物足りない。でも良い所もあります。
車等の思考や価値観や会話が面白いです。
タクシーはプライド高い、電車は車輪が多く大勢の
人を乗せて遠くまで行けるから車にとっては
憧れの存在。踏切前で、すれ違う電車と話をする
のが誇らしい。
自転車は車が話しかけても意味不明な言葉しか
返せないけれどなんだか可愛い。
車同士の会話で、驚くと「ワイパー動くよな」等と言う
感覚も面白い。ピクサーアニメを連想させます。
車視点で、乗っている人の挙動を観察、会話を
聞いての推理を中心に、善良だったり生意気
だったりな登場人物達が謎を解いていく過程を
ユーモラスに描きます。
この作家ならではの軽妙で楽しげな語り口が
心地よく、深刻になりがちな話もポジティブに
感じられます。
読後感良く爽やかで、ライトノベル感覚で読む
のでしたらお薦めです。
「ロボット」という言葉を世界に広めた、SF作家でもある
ジャーナリスト、エッセイストのイギリス旅行記。
翻訳ものは最近ずっと、名訳に当ってきただけに
これはきつかった><
扱っている題材やエピソードは興味深いのに、なんだか
とても読み辛い。
時々何が言いたいのかわからない訳があります。例えば
「時間と空間の相対性は恐ろしいものだ。しかしもっと恐ろしいのは
文化と歴史の相対性である。われわれの後にも前にも人間の静穏と
理想、十分な内容と完全性を持つ絶対的な点はどこにも存在しない。
なぜならそのような点はどこにでもあると同時に、どこにもないもの
だから。人間が作品を固定させた空間と時間のどの点をとっても、
それは乗り越えられないからである」(本文から引用)
スムーズに読めて面白い時もあるのですけど、時々
こんな文章が出てきてちょっと混乱します^^;
良い訳で読みたかった。
表紙絵、挿絵は作家本人によるもの。
ヘタウマ系で味があって良い感じ。
【ベスト・エッセイ】日本文藝家協会編
77人の作家や各界著名人のショートエッセイ集。
書き手は作家が多く、いろいろな雑誌等に発表
されたエッセイの再録集。
様々な題材で思い思いに綴った文章が個性に
溢れていて面白いです。
一気読みするのではなく、毎日少しづつ味わうように
読み進めていくとお得な気分。
「食」に関する本、「食」の場面が印象的な本100冊
について綴られたエッセイ集。
本の帯に「書評エッセイ」と書いてありますが
エッセイの比重が大きく、書評部分は少ないです。
ですが書き手それぞれの思い出話等に触れつつ
書かれた文章の読み応えは十分。
1冊につき2Pという持ちページでこれだけ深い話を
書ける事に驚くと共に、余韻の残る語り口にも魅了
されます。個人的には堀江敏幸の情緒的な感性が
好み。
本と食の話がある思い出エッセイとして読むのなら
お薦め度◎。