【映画の感想】
【紳士協定】 という1947年製作のアメリカ映画を観ました
(画像はWikiより)
あらすじは
妻に先立たれて、幼い息子と老いた母親と暮らす人気ライター、フィル・グリーン
(グレゴリー・ペック)。彼は週刊誌編集長の招きでカリフォルニアからニューヨークに
引っ越した。反ユダヤ主義に関する記事を依頼された彼はユダヤ人になりすまして、
その実態を探ろうとする。
だが、彼がグリーンバーグと名乗ったとたんに、周囲の人々の反応は豹変した。
一家が住むアパート、母のかかりつけの医者、息子の学校、高級ホテル……。
暗黙の「紳士協定」は至る所に存在していた。
フィルは編集長の姪キャシー(ドロシー・マクガイア)と愛し合い結婚を誓うが、
ユダヤ人問題に対する考え方の違いから、二人の間には大きな溝ができてしまう。
ある日、フィルが会社幹部との昼食の席で、自分はユダヤ人だと告白。
噂はあっという間に広まり、差別はいっそう激しくなった。またフィルとキャシーの
ハネムーン先に予定していた高級ホテルもユダヤ人であることを理由にキャンセル
されてしまう。
フィルの幼なじみのユダヤ人デイヴィット(ジョン・ガーフィールド)は
「差別や偏見を目前にして沈黙するのは、それを助長することでしかない。」と言う。
キャシーは自分の考えが誤っていたことに気づく。やがてフィルの記事が発表される
日が近づいてきた。(Wikiより)
この作品、最初から会話のセンスが非常に良くてリアリティがあり、
「これは当たり」だと感じ、グイグイ惹きつけられました
女性キャラがただ見た目が良いだけの立ちん坊ではなく、個人個人の
意思や個性がハッキリしていて魅力的。そういう芝居や会話の妙に
惚れました
原作か脚本が女性だと思ったのは当たっていた<原作
例えば食事の時、フィルやその息子が読んでいる新聞や漫画を
フィルの母が手馴れた手つきで取り上げて畳んで椅子に腰掛けたり
キャシーが煙草を吸うとき、鼻からも煙を出していたり
(原作脚本監督が男性ばかりの場合、普通やらない)
フィルの母(大好きだー(*≧∀≦*))の細やかな表情や仕草が
愛情や思いやりに満ちていたり毅然としていたり
女性の言葉や仕草がとても自然
対して男性の描かれ方はやや類型的に感じる
フィルは主役なのでまぁまぁ普通にいいのではないかと
女性受け良さそうですが、私の趣味ではないな・・・
名セリフが沢山
フィルの母「遅刻する人を待つのは楽しいわね」
フィル「世界を背負っているから早くは歩けないんだ」
フィル「幸せだった?」
キャシー「そうね、人に嫉妬せずにすんだ
でも俗物になったわ」
フィル「卵の味付けは何?」
フィルの母「愛情よ」
フィルの息子「ねぇ(フィルの母が)死んじゃうの?」
フィル「皆いつか死ぬ 私もおまえも」
パーティーで
「楽しいわね 私の魔法のおかげ」(←以下ジョーク
「杖はいらないのかい?」
「いらない 使いこなせないもの」
「傘に冗談を言ったらずぶ濡れに」
「ある時は 真剣な顔をしたら 整形してると思われた」
「教えて どうしていい男はみんな結婚してるの?」
「運が悪いが 男を見る目がある」
「男が妻に望むのは、ただの愛する女ではなく子供の母親でもない。
世の中の荒波を共に乗り切る相棒なんだ」
「無関心を装っている人々に、この問題の核心を突きつけるんだ」
「善良だけでは足りない。 何もしないで傍観しているのは愚劣なルール
への同調だ」
話は平たく言えば
「ユダヤ人に限らず差別はよくない」
「差別的な場面を見て見ぬふりするのも同罪」
でも差別描写は、見ていて不快に感じるほどのものではない・・・
甘く綺麗すぎるように見えなくもない
だけど観客が、そういう事についてどう考えるか、一時的な
感情にとらわれず冷静に考える余地を残している、と思えた
このさじ加減は上手いと思いました
作品としては、オチの部分が少し安易に思えたのでちょっと減点
✩5満点で4.5
ドラマティックな出来事が起きていなくても目が離せない
主要人物皆魅力的、会話が楽しい、問題提起によって私なりに
思う事もあったりいろいろ収穫の多い作品でした
惜しむらくは・・・
この作品が、作品としての質ゆえではなく、恐らく
会員にユダヤ人が多数いるという理由で
アカデミー賞を取ったこと
エリア・カザン監督が赤狩りの時、自らにかけられた嫌疑を逃れる為
司法取引をし、映画仲間を「売った」こと
作家も画家も音楽家もそうでしょうが、創作に関わる人間は
ある場合には何か「欠けているもの」が創作の原動力や強い衝動に
結びつく事もある訳で
カザン監督が何故仲間を売るような真似をしたのかわかりませんが
創作作品の出来や評価と、作り手の人間性はイコールでない場合も
多々あるので、作品は単体で評価されるべきと私は考えます
ただ、機会があれば、エリア・カザンの自叙伝を読んでみたいです
尚、
佐藤優のイギリス滞在記で「紳士協定」という本がありますが
この映画とは全くの別物です